PMI、ロールアップ、バリューアップ──M&A戦略における3つのアプローチの違いと使い分け
M&Aというと「買うかどうか」の判断や「いくらで買うか」が注目されがちですが、本当に重要なのは“買った後に何をするか”です。
その「買収後の戦略」には、大きく以下の3つのアプローチがあります:
- PMI(Post Merger Integration):統合によるシナジー最大化
- ロールアップ(Roll-up):同業の統合によるスケール構築
- バリューアップ(Value-up):経営改善・成長支援による企業価値向上
本記事では、それぞれの概念・目的・実務上の違いについて解説し、どのように使い分けるべきかを整理していきます。
1. PMI──統合による“シナジー最大化”を狙う戦略
PMI(Post Merger Integration)とは、M&A後に行われる“経営統合プロセス”を指します。組織・人事・システム・文化など、あらゆる要素を統合し、1+1を2以上にする“統合作業”が目的です。
【特徴】
- 組織や業務プロセスを一本化し、冗長なコストや重複業務を排除できる
- 人事制度・評価制度を統合することで人材の再配置や登用を進めやすい
- システム基盤を共通化することで、経営データの可視化や迅速な意思決定を促進
【ポイント】
- 「買収した側・された側」という関係性を超え、同じビジョンを共有する文化統合が最重要
- 統合プロジェクトの初期段階で“統合のゴール”を定義しておくことが、後の軋轢回避に有効
- IT・人事・財務・営業など各領域でPMIチームを組成し、分野別に統合タスクを推進する
2. ロールアップ──同業統合でスケールを構築する戦略
ロールアップ(Roll-up)は、同業他社を多数買収し、一つのプラットフォームに集約していくM&A戦略です。分散していた企業を統合することで、規模の経済やマーケット支配力を獲得することを狙います。
【特徴】
- 特定の業種において細かく分散したプレイヤーを統合し、業界の中で中核的な存在へと成長できる
- 統合前は個別に管理されていた経営資源(顧客基盤、人材、拠点など)を一元管理できる
- 標準化された業務フローや共通プロダクトの展開により、運営効率が大幅に向上
【ポイント】
- 統合される企業群には“共通の業態・サービスモデル”があることが前提(業種の類似性が鍵)
- 「横展開の型」を用意し、後発の買収先にも同じ運営ルールを適用できる状態を構築する
- ブランド統合や価格戦略の見直しによって、バラバラだった市場イメージを一本化し、影響力を最大化する
3. バリューアップ──“企業の中身”を磨いて価値を高める
バリューアップ(Value-up)は、買収先企業に対して経営改善や成長支援を行い、企業価値そのものを高めるアプローチです。PEファンド(プライベート・エクイティ)によるM&Aで典型的に使われます。
【特徴】
- 経営陣や現場と密に連携し、業績改善や新規事業の立ち上げなど“会社の中身”に踏み込んだ支援を行う
- 単に財務数値を改善するだけでなく、人材開発や経営管理体制の強化なども含まれる
- 「出口戦略(売却)」を前提とするケースが多く、一定期間内での成果創出が求められる
【ポイント】
- 経営状況を見極めた上で、真に効果的な改善テーマを設定(KPI、部門別P/Lなど)
- オーナー企業や中小企業の事業承継においても、事業基盤の安定化を通じて後継経営者にバトンを渡す準備になる
- 外部アドバイザーや元CxO人材などの「実行支援者」との連携が成功の鍵
4. 違いを図解で整理:PMI・ロールアップ・バリューアップ

5. まとめ:どの戦略が最適かは「何を狙うか」で決まる
PMI、ロールアップ、バリューアップ──どれが優れているかではなく、「自社がM&Aを通じて何を成し遂げたいのか?」が起点になります。
- 経営統合による業績向上を狙うなら PMI
- シェア拡大や市場支配力の強化なら ロールアップ
- 経営の中身を磨き、長期価値を高めるなら バリューアップ
M&Aは「買って終わり」ではなく、「買った後にどう動くか」で成果が決まります。ぜひ、戦略設計の一環として3つのアプローチを使い分けてみてください。
プロPMI
プロPMIはM&A後のPMIを専門としたコンサルタントです。
スタートアップ・中小企業向けに、PMI経験豊富なコンサルタントが直接支援します。
バリューアッププラン、100日計画、PMIの実行などは幅広く対応します。
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