PMIで発生する経営層と現場の乖離。現場の課題とトラブル解決のポイント

M&Aによる企業統合(PMI:Post-Merger Integration)において、多くの企業が直面する問題の一つが「経営層と現場の乖離」です。経営層が掲げる戦略と現場の実態が噛み合わず、結果としてシナジーが生まれないケースは少なくありません。

特に、スタートアップや中小企業では、限られたリソースの中で統合を進める必要があり、経営層と現場のギャップがより顕著になりがちです。現場の不満が蓄積すると、従業員のモチベーションが低下し、離職率が上がることにもつながります。

本記事では、PMIにおいて経営層と現場の間に生じる課題やトラブル事例を紹介し、解決策を提示していきます。


1. PMIにおける経営層と現場のギャップが生じる理由

経営層の視点:シナジー創出と統合方針

経営層はM&Aによって得られるシナジー効果を期待し、業務効率化やコスト削減を前提とした統合計画を立てます。たとえば、2つの企業が統合した場合、システムの一本化や組織のスリム化を進めることでコストを削減し、利益率を向上させようと考えます。

しかし、これが現場にどのような影響を与えるのかを深く考慮しないまま進めると、業務負担の増加や従業員の不満が高まり、統合がスムーズに進まないリスクが生じます。

現場の視点:日々の業務負担と変化への不安

一方、現場の従業員は「明日からの業務がどう変わるのか」という視点でPMIを捉えます。特に、業務フローの変更やシステム移行があると、それに適応する負担が大きくなります。

例えば、ある企業では買収後に経理システムを統合したところ、従来3日で終わっていた決算処理が、新システム導入後は2週間かかるようになり、経理部門から大きな反発がありました。経営層は「システムの統一によるコスト削減」を狙っていたものの、現場の業務効率が大幅に下がり、結果的にコストが増加してしまったのです。

コミュニケーション不足が生む認識のズレ

経営層と現場の乖離は、コミュニケーション不足によってさらに深まります。経営層がトップダウンで施策を決定し、現場に十分な説明がなされない場合、従業員の不安が増大します。

ある企業では、統合後に「社員の待遇は変わらない」と発表されたにもかかわらず、給与計算方法の変更により手取りが減少。これがSNS上で拡散され、従業員の信頼が揺らぎ、結果的に優秀な社員が退職する事態に発展しました。


2. PMIにおける現場の課題とよくあるトラブル事例

事例①:業務プロセスの変更による混乱

PMIにおいて最もよくあるのが、業務プロセスの変更に伴う混乱です。例えば、製造業では、生産管理システムを統合したことで現場の作業手順が変わり、納期遅延が発生。結果的に顧客の信頼を失うことになりました。

事例②:企業文化の違いによる対立

企業文化の違いも、統合時の大きな課題です。特に、ベンチャー企業が大手企業に買収されるケースでは、スピード感の違いが問題になります。買収前は「即決・即断」が求められていたのに、買収後は「稟議書が必要」となり、現場がストレスを感じるケースが多発します。

事例③:待遇・評価制度の不満による離職リスク

待遇や評価制度の変更も大きな問題です。例えば、ある企業ではPMI後に「営業インセンティブ制度」が変更され、従来のパフォーマンス評価ではなく、新しい基準に沿った評価方式に変更。その結果、トップ営業マンが次々に退職し、業績が低下する事態に陥りました。

事例④:PMIプロジェクトの目的が現場に伝わらない

PMIチームが現場の意見を吸い上げず、一方的に統合施策を推し進めると、従業員の不満が蓄積します。例えば、企業統合後に「効率化のための部署再編」が発表されたものの、その理由が十分に説明されず、「自分たちは不要なのか」と感じる社員が増え、士気が低下したケースがありました。


3. 経営層と現場の乖離を解消するポイント

① 現場の声を吸い上げる仕組みづくり

現場の意見を直接経営層に届ける仕組みを作ることが重要です。例えば、PMI専任チームが定期的に現場ヒアリングを行い、課題を整理することで、不満の早期発見が可能になります。

② 透明性の確保と情報共有

統合プロセスの透明性を高め、現場に対して適切に情報を共有することも重要です。「PMIロードマップ」を作成し、各フェーズの進捗を可視化することで、現場の安心感が増します。

③ 短期・中期の成功体験を作る

「小さな勝ち(Quick Win)」を生み出すことで、現場のモチベーションを維持できます。例えば、システム統合後に「業務時間が30%削減された」といった具体的な成果を示せば、従業員の納得感が向上します。

④ インセンティブ設計によるモチベーション向上

給与や評価制度の変更が避けられない場合は、現場のモチベーションを維持するインセンティブ設計が必要です。たとえば、PMIの成功に応じて特別ボーナスを設けるなどの施策が有効です。


4. まとめ

PMI成功の鍵は、経営層と現場が協力して統合プロセスを進めることにあります。「経営層の戦略」と「現場の実態」を繋ぐ施策を講じることで、スムーズなPMIが実現できるでしょう。

プロPMI

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